参院選 自民党改憲草案② 「国民の義務」と「公益と公の秩序」について
- 2016/07/06
- 22:09
焦点 自民党改憲草案 ② 「国民の義務」と「公益と公の秩序」について
琉球新報 2016年6月14日 7面
国民の義務 国旗国歌、憲法尊重課す
自民党草案は国民に義務を課す規定をさまざまな分野で新設。3条で「国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」とした。「国旗・国歌を巡って教育現場で混乱が起きていることを踏まえた」と説明する。
婚姻などに関する24条には「家族は、互いに助け合わなければならない」との一文を加えた。新設の理由を「家族の絆が薄くなってきていると言われている」とする。
現行憲法は国務大臣や国会議員、公務員に憲法の順守義務を課しているが、草案は102条で「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」とした。
(付記:現行 第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。となっています。
これに国民が含まれていないのは、憲法は国家権力に縛りをかけるためのものであり、本質的に「国民が守る」法ではないからです。改憲案は、それを「全て国民は」と、国民を縛る内容となっています。)
国旗・国歌に関しては思想・良心の自由を侵害する、との見方がある。家族については「あるべき家族の姿」を押し付け、多様な生き方を阻害する恐れがあるとの懸念も。
そもそも権力者の暴走を防ぐためにある憲法に、こうした規定を盛り込むのは立憲主義に反するとの批判がある。
公益と公の秩序 人権や表現、制限の恐れ
「すべて国民は、個人として尊重される」と現行憲法で定める13条で、自民党草案は「個人」を「人」と改めている。
生命・自由・幸福追求権の尊重をうたう部分では、現行は人権相互の衝突を調整するため「公共の福祉に反しない限り」との制約を付けているが、草案は「公共の福祉」の意味が曖昧だとして「公益及び公の秩序」に改めた。
草案は表現の自由を定めた21条でも「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、(略)結社をすることは、認められない」としている。自民党は「オウム真理教に対して破壊活動防止法が適用できなかったことの反省などを踏まえた」と説明する。
「個人」を「人」と変えることには「個人よりも集団を尊重する発想につながる」などの批判がある。
「公益及び公の秩序」に関しても、政府の判断によって解釈が広げられ、人権や表現が不当に制限されるようにならないか、との懸念が出されている。
琉球新報 2016年6月14日 7面
国民の義務 国旗国歌、憲法尊重課す
自民党草案は国民に義務を課す規定をさまざまな分野で新設。3条で「国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」とした。「国旗・国歌を巡って教育現場で混乱が起きていることを踏まえた」と説明する。
婚姻などに関する24条には「家族は、互いに助け合わなければならない」との一文を加えた。新設の理由を「家族の絆が薄くなってきていると言われている」とする。
現行憲法は国務大臣や国会議員、公務員に憲法の順守義務を課しているが、草案は102条で「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」とした。
(付記:現行 第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。となっています。
これに国民が含まれていないのは、憲法は国家権力に縛りをかけるためのものであり、本質的に「国民が守る」法ではないからです。改憲案は、それを「全て国民は」と、国民を縛る内容となっています。)
国旗・国歌に関しては思想・良心の自由を侵害する、との見方がある。家族については「あるべき家族の姿」を押し付け、多様な生き方を阻害する恐れがあるとの懸念も。
そもそも権力者の暴走を防ぐためにある憲法に、こうした規定を盛り込むのは立憲主義に反するとの批判がある。
公益と公の秩序 人権や表現、制限の恐れ
「すべて国民は、個人として尊重される」と現行憲法で定める13条で、自民党草案は「個人」を「人」と改めている。
生命・自由・幸福追求権の尊重をうたう部分では、現行は人権相互の衝突を調整するため「公共の福祉に反しない限り」との制約を付けているが、草案は「公共の福祉」の意味が曖昧だとして「公益及び公の秩序」に改めた。
草案は表現の自由を定めた21条でも「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、(略)結社をすることは、認められない」としている。自民党は「オウム真理教に対して破壊活動防止法が適用できなかったことの反省などを踏まえた」と説明する。
「個人」を「人」と変えることには「個人よりも集団を尊重する発想につながる」などの批判がある。
「公益及び公の秩序」に関しても、政府の判断によって解釈が広げられ、人権や表現が不当に制限されるようにならないか、との懸念が出されている。