なぜ原発を推進するのかについて
- 2016/03/22
- 09:05
なぜ原発を推進するのかについて
3.11から4年経ち、原発がすでに4箇所、再稼働しました。
国民の8割が反対というのに、コストも膨大、全停止でも電力供給できていたのに、なぜ多くの住民の反対を押し切ってまで、再稼働するのでしょうか。
原発やその被害がどのような状況なのか、なかなか報道からはわかりにくいと思われますので、「原発と戦争を推し進める愚かな国、日本」2015.9 小出裕章著から示します。(小出氏は、京都大学原子炉研究所助教授を勤めるなどした、原子炉の専門家です。)
福島県が実施している子どもの甲状腺がん検査によると、2015年3月の最新結果では、甲状腺がんと確定した子どもの数は103人、疑いも含めると126人いた。http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1915
福島県が2011年から実施している3カ年の調査では、29万人のうち、98人が甲状腺がんとの結果出ています。
http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/05/post_11784.html
100万人あたりだと330人で、国際的発症水準が100万人に1人か2人なので、小出氏の推計では140倍~350倍という、通常では考えられないような発症率になっています。(単純計算でも165倍~330倍になります。)
そして、原発の現状、下記も重要ですので、上記小出氏の本より示します。
メルトダウンした福島第一原発の1~3号機からは放射能汚染水は漏れだしたままです。
運転中でなかった4号機でもなぜか水素爆発が起こり、使用済み燃料プールが宙づりになりましたが、そのプールの底には、1535体の燃料集合体が置かれていました。(この運転中でない4号機も、「なぜか」水素爆発、というのは気になります。ちなみにその4号機には大量の核物質があり、下記の作業が行われています。)
その燃料プールには、広島原爆に換算すると、約1万4000発分のセシウム137が含まれていた。
1~3号機から空中に出たセシウムの合計は広島原爆168発分だったが、それとは比較にならない。
そこから燃料を運び出す作業がようやく始まったのは、それから約2年後、2013の11月になってからでした。そして1年後の2014年12月には、すべての燃料を、100メートルほど離れた共用プールに移し終えることができました。
おそらくこれで、東京を放棄しなければいけないという事態は避けられたでしょう。本当に、ほっとしました。
もちろんこれで事故が収束したわけではありません。メルトダウンした1~3号機からは、今も大気中に放射性物質が、敷地から海へは放射能汚染水が漏れ出していますし、溶け落ちてどこにあるかすらわからない核燃料の始末をつけなければなりません。
(本から以上です。)
そして、なぜ政府は原発を再稼働するのかについて、「原発洗脳」2013.1 (苫米地英人著)より、利権などに関する記述がありました。決してコストでも、供給できないからでもありません。
なぜ原発を推進するのかを一言で言うと、「高価な原発を造れば、報酬も上がり、電気代に転嫁できる。火力では儲からない」からです。
「総括原価方式」という電気代の計算方法を使っているからです。
先の苫米地氏の本から、記載します。
「常識的に考えれば、原発が儲かって、火力が損をするということはありえないはずです。火力の利益率が低いとしても、火力発電だけでも利益が出るように料金設定されています」「電力会社は、(中略)利益が出るように価格転嫁できますので、長期的に見れば、儲かるようになっています」(P44)
日本人は、(電気料金の競争が進んでいるアメリカに比べ)何倍もする高い電気代を払っています。燃料代が高騰してもすべて電気代に価格転嫁できるので、電力会社が儲からないというのは嘘です。
燃料費だけでなく、総括原価方式という(電気代の)計算方式によって電力会社が多額の報酬を得られます。
◆「総括原価方式」とは、(この「総括原価方式」というのは、原発を知る上での重要キーワードです。)
具体的には、原発高くても、かかった費用に一定の報酬を上乗せした料金を電気料金としていいのです。
まだ完成していない、電気を生み出していない原発資産に一定の報酬率をかけた「報酬」を今現在の電気料金の中に含められるという電気料の設定方式です。どれほどの巨額の資金がかかろうと、電力会社は、電気料金に上乗せできるため、原発を造り続けられます。
事業資産を元に報酬が決まるので、高額の燃料棒を買っておけば、それで報酬が増え、利益が生み出されます。
資産の額が大きければ大きい方が、報酬額が増えていきます。火力発電所よりも高い原子力発電所を造った方が、電力会社としてはおいしいのです。(P166等)
(核ゴミも資産として扱われるため、核ゴミ、原発を増やすほど儲かります。)
では、なぜこんなに原発が利権まみれになっているのでしょう。
しかも、核ゴミ、原発を増やさせる報酬設定。同じこの本「原発洗脳」に、重要なことが書いてありました。
「日本の原発もアメリカの核戦略の一環」
日本は核の置き場所という位置づけも持たされています。日本の原発は、アメリカの核燃料備蓄場といってもいいくらいです。
(「なぜか」爆発の起きた、福島原発の第4号機は、もしかしたらその置き場だったのでは、と考えるのは不自然でしょうか)
アメリカ軍の核兵器が不足した場合には、日本の原発の核燃料などを接収して、アメリカの核兵器に転用します。(P124)
アメリカにとっては、日本は核の最前線備蓄基地です。原発用の低濃縮ウランを再処理したプルトニウムの形で、日本に核を備蓄しています。
また、劣化ウラン工場も日本に置いています。(劣化ウランは、比重が高いので貫通力のある弾がつくれるとされます。被ばく事故は起こります。)
劣化ウランの工場は、ハワイまたはグアムの米軍基地と、日本の岩国基地の近くにあるといわれています。いずれもアメリカの本土外にあり、アメリカ本土では世論の反対が根強く、工場を建設できないということでしょう。(P129)
ウラン濃縮技術を持った国は、商業用原子炉の核燃料を短期間で核兵器に転用することができます。(日本の原発にある核物質を加工すれば、短期間で核兵器が作れるということです)時間がかかるウラン鉱石からの精製は終わっていますので、そこから先は比較的簡単にできます。
アメリカは、有事の際には日本の原発の核燃料を接収し、アメリカ軍の技術を使って核兵器に転用できる高濃縮ウランに変えます。そうすれば、核兵器がいくらでもつくれます。
要するに、日本の原発は、アメリカ軍の核兵器のためのウラン備蓄基地として利用されているのです。(P134 )
核ゴミ、核燃料、原発を置かせるために、それらに利権をつけているように見えます。
恐らく、外務省、内閣府、(防衛省?)の幹部は、上記を聞いても「アメリカの核の傘を維持するための、日本の義務だから仕方がない」と神妙な顔をして説明するのかもしれません。
しかし、そもそも、普通に考えて、アメリカ人の死活に関わる核の先制攻撃を、同盟国のためにやるでしょうか。
核抑止、核の傘は、「相互確証破壊戦略」という、相手から潜水艦で報復されるので「先制攻撃しない」という原則で成り立っています。同盟国を守るために、核兵器を使うというのは、相手からすると先制攻撃当たるわけで、この原則から矛盾します。
核抑止論の大家、キッシンジャー博士は、彼の出世作「核兵器と外交政策」という本で、「米国大統領は、西ヨーロッパと米国の都市50 を引き替えにするたろうか。そんなことはしない。まして、西ヨーロッパ以外の国を守るというのは意味がない」と書いています。
ターナー元CIA長官も、1986 年6月25 日付読売新聞で「我々はワシントンを破壊してまで同盟国を守る考えはない。アメリカが結んできた、いかなる防衛条約も核使用に言及したものはない。日本に対しても有事の時には助けるだろうが、核兵器は使用しない。」とまで言っています。(孫崎享 ディープナイト 第2夜「自主防衛と核戦略」DVD 2010年7月27日収録 より)
中国も原発があるという条件は同じなので、「核ミサイルを作ろうと思えば一気に作れる」そうです。中国が原発を推進しているのはそういう面もあるでしょう。
上記から、核の傘論に乗って日本が核を配備、貯蔵庫の原発を復活させると、日本は、国土国民は、危ないのではないでしょうか。
日米原子力協定は2018年で更新期限を迎えます。これらについて議論するタイミングは今のように思われます。
掲載記事筆者:ミロク会・政治経済 担当者
3.11から4年経ち、原発がすでに4箇所、再稼働しました。
国民の8割が反対というのに、コストも膨大、全停止でも電力供給できていたのに、なぜ多くの住民の反対を押し切ってまで、再稼働するのでしょうか。
原発やその被害がどのような状況なのか、なかなか報道からはわかりにくいと思われますので、「原発と戦争を推し進める愚かな国、日本」2015.9 小出裕章著から示します。(小出氏は、京都大学原子炉研究所助教授を勤めるなどした、原子炉の専門家です。)
福島県が実施している子どもの甲状腺がん検査によると、2015年3月の最新結果では、甲状腺がんと確定した子どもの数は103人、疑いも含めると126人いた。http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1915
福島県が2011年から実施している3カ年の調査では、29万人のうち、98人が甲状腺がんとの結果出ています。
http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/05/post_11784.html
100万人あたりだと330人で、国際的発症水準が100万人に1人か2人なので、小出氏の推計では140倍~350倍という、通常では考えられないような発症率になっています。(単純計算でも165倍~330倍になります。)
そして、原発の現状、下記も重要ですので、上記小出氏の本より示します。
メルトダウンした福島第一原発の1~3号機からは放射能汚染水は漏れだしたままです。
運転中でなかった4号機でもなぜか水素爆発が起こり、使用済み燃料プールが宙づりになりましたが、そのプールの底には、1535体の燃料集合体が置かれていました。(この運転中でない4号機も、「なぜか」水素爆発、というのは気になります。ちなみにその4号機には大量の核物質があり、下記の作業が行われています。)
その燃料プールには、広島原爆に換算すると、約1万4000発分のセシウム137が含まれていた。
1~3号機から空中に出たセシウムの合計は広島原爆168発分だったが、それとは比較にならない。
そこから燃料を運び出す作業がようやく始まったのは、それから約2年後、2013の11月になってからでした。そして1年後の2014年12月には、すべての燃料を、100メートルほど離れた共用プールに移し終えることができました。
おそらくこれで、東京を放棄しなければいけないという事態は避けられたでしょう。本当に、ほっとしました。
もちろんこれで事故が収束したわけではありません。メルトダウンした1~3号機からは、今も大気中に放射性物質が、敷地から海へは放射能汚染水が漏れ出していますし、溶け落ちてどこにあるかすらわからない核燃料の始末をつけなければなりません。
(本から以上です。)
そして、なぜ政府は原発を再稼働するのかについて、「原発洗脳」2013.1 (苫米地英人著)より、利権などに関する記述がありました。決してコストでも、供給できないからでもありません。
なぜ原発を推進するのかを一言で言うと、「高価な原発を造れば、報酬も上がり、電気代に転嫁できる。火力では儲からない」からです。
「総括原価方式」という電気代の計算方法を使っているからです。
先の苫米地氏の本から、記載します。
「常識的に考えれば、原発が儲かって、火力が損をするということはありえないはずです。火力の利益率が低いとしても、火力発電だけでも利益が出るように料金設定されています」「電力会社は、(中略)利益が出るように価格転嫁できますので、長期的に見れば、儲かるようになっています」(P44)
日本人は、(電気料金の競争が進んでいるアメリカに比べ)何倍もする高い電気代を払っています。燃料代が高騰してもすべて電気代に価格転嫁できるので、電力会社が儲からないというのは嘘です。
燃料費だけでなく、総括原価方式という(電気代の)計算方式によって電力会社が多額の報酬を得られます。
◆「総括原価方式」とは、(この「総括原価方式」というのは、原発を知る上での重要キーワードです。)
具体的には、原発高くても、かかった費用に一定の報酬を上乗せした料金を電気料金としていいのです。
まだ完成していない、電気を生み出していない原発資産に一定の報酬率をかけた「報酬」を今現在の電気料金の中に含められるという電気料の設定方式です。どれほどの巨額の資金がかかろうと、電力会社は、電気料金に上乗せできるため、原発を造り続けられます。
事業資産を元に報酬が決まるので、高額の燃料棒を買っておけば、それで報酬が増え、利益が生み出されます。
資産の額が大きければ大きい方が、報酬額が増えていきます。火力発電所よりも高い原子力発電所を造った方が、電力会社としてはおいしいのです。(P166等)
(核ゴミも資産として扱われるため、核ゴミ、原発を増やすほど儲かります。)
では、なぜこんなに原発が利権まみれになっているのでしょう。
しかも、核ゴミ、原発を増やさせる報酬設定。同じこの本「原発洗脳」に、重要なことが書いてありました。
「日本の原発もアメリカの核戦略の一環」
日本は核の置き場所という位置づけも持たされています。日本の原発は、アメリカの核燃料備蓄場といってもいいくらいです。
(「なぜか」爆発の起きた、福島原発の第4号機は、もしかしたらその置き場だったのでは、と考えるのは不自然でしょうか)
アメリカ軍の核兵器が不足した場合には、日本の原発の核燃料などを接収して、アメリカの核兵器に転用します。(P124)
アメリカにとっては、日本は核の最前線備蓄基地です。原発用の低濃縮ウランを再処理したプルトニウムの形で、日本に核を備蓄しています。
また、劣化ウラン工場も日本に置いています。(劣化ウランは、比重が高いので貫通力のある弾がつくれるとされます。被ばく事故は起こります。)
劣化ウランの工場は、ハワイまたはグアムの米軍基地と、日本の岩国基地の近くにあるといわれています。いずれもアメリカの本土外にあり、アメリカ本土では世論の反対が根強く、工場を建設できないということでしょう。(P129)
ウラン濃縮技術を持った国は、商業用原子炉の核燃料を短期間で核兵器に転用することができます。(日本の原発にある核物質を加工すれば、短期間で核兵器が作れるということです)時間がかかるウラン鉱石からの精製は終わっていますので、そこから先は比較的簡単にできます。
アメリカは、有事の際には日本の原発の核燃料を接収し、アメリカ軍の技術を使って核兵器に転用できる高濃縮ウランに変えます。そうすれば、核兵器がいくらでもつくれます。
要するに、日本の原発は、アメリカ軍の核兵器のためのウラン備蓄基地として利用されているのです。(P134 )
核ゴミ、核燃料、原発を置かせるために、それらに利権をつけているように見えます。
恐らく、外務省、内閣府、(防衛省?)の幹部は、上記を聞いても「アメリカの核の傘を維持するための、日本の義務だから仕方がない」と神妙な顔をして説明するのかもしれません。
しかし、そもそも、普通に考えて、アメリカ人の死活に関わる核の先制攻撃を、同盟国のためにやるでしょうか。
核抑止、核の傘は、「相互確証破壊戦略」という、相手から潜水艦で報復されるので「先制攻撃しない」という原則で成り立っています。同盟国を守るために、核兵器を使うというのは、相手からすると先制攻撃当たるわけで、この原則から矛盾します。
核抑止論の大家、キッシンジャー博士は、彼の出世作「核兵器と外交政策」という本で、「米国大統領は、西ヨーロッパと米国の都市50 を引き替えにするたろうか。そんなことはしない。まして、西ヨーロッパ以外の国を守るというのは意味がない」と書いています。
ターナー元CIA長官も、1986 年6月25 日付読売新聞で「我々はワシントンを破壊してまで同盟国を守る考えはない。アメリカが結んできた、いかなる防衛条約も核使用に言及したものはない。日本に対しても有事の時には助けるだろうが、核兵器は使用しない。」とまで言っています。(孫崎享 ディープナイト 第2夜「自主防衛と核戦略」DVD 2010年7月27日収録 より)
中国も原発があるという条件は同じなので、「核ミサイルを作ろうと思えば一気に作れる」そうです。中国が原発を推進しているのはそういう面もあるでしょう。
上記から、核の傘論に乗って日本が核を配備、貯蔵庫の原発を復活させると、日本は、国土国民は、危ないのではないでしょうか。
日米原子力協定は2018年で更新期限を迎えます。これらについて議論するタイミングは今のように思われます。
掲載記事筆者:ミロク会・政治経済 担当者
- テーマ:環境・資源・エネルギー
- ジャンル:政治・経済
- カテゴリ:経済