日本の省庁を改変し、その対応能力を高める必要性について(2)
- 2020/05/07
- 16:22
2つ前の記事で示したように、日本政府機関が海外の戦略に対処できない、政策立案、技術革新ができない、国の浮揚のために予算措置できない状況は、日本の地位を復元不可能にまで落としかねない状況にあります。
(この危機に、日本の為政者たちが気づくかがまず大事です)
官僚機構は、平成以降、様々な改革が試みられましたが、これまで温存されてきました。
そうして今の日本の行政機構は、コロナ一つとっても、東アジア、東南アジアの国が迅速に対応している中、日本は外圧や業界もあり、判断ができなくなっているような状況があります。
これまで霞が関の仕事は、欧米の先進的な法制度を翻訳するような仕事が多かったのですが、現在、技術流出や企業買収など、技術戦、国際競争が激化し、TPP含め海外企業や中国などの戦略にほとんど対応できなくなっています。
これまでの翻訳と違い、「政策の分析・検討の仕事」が高度化する中、政府内に、志があり現状に対応できる頭脳集団が必要です。民間企業、海外からも、志ある優秀な人材の登用し、政策決定や実施に活かすことが必要です。
これまで、橋本、小泉、安倍、福田、麻生政権、民主党の鳩山政権が、保革問わず脱官僚の取組をしてきましたが、省庁のごまかし作戦や時間経過作戦が勝り、かなり温存されています。
実は、第一次安倍内閣は公務員制度改革に本格的に取り組み、天下りの根絶のため、「官民人材交流センター」あっせんへの一元化の法案を成立させました。(その後は十分機能していませんが)
その後、福田内閣では、「国家公務員制度改革基本法」、麻生内閣では「内閣人事局」法案提出、
そして鳩山内閣では、「事務次官会議の廃止」「国家戦略局」「行政刷新会議」「国家戦略担当大臣」の設置などを行っていました。
第一次安倍内閣は、実は、天下り根絶を中心に、公務員制度改革に尽力しており、その後変節した可能性もありますが、本来はそういう意識を持っていたと思います。
行政改革の失敗に学び、どのように変えたらいいのかについて。
自民党、民主党が道半ばの「脱官僚」の失敗をもとに、今後の内閣へのメッセージとして、下記5カ条が示されており、中央省庁はもとより、地方行政の改革にも使える重要なノウハウだと思いますので、示します。
官僚のレトリック 原英史著(p208~222)より
「脱官僚」を実現するための5カ条
1.官僚を使いこなす前に、官僚を選べ
真っ先にやることは、使える幹部を選別し、一緒に国の再生に取り組める人物を抜擢・登用することである。「幹部人材の見極め」と「抜本的な再配置」を最初に行うべきである。
人材を選ぶことは意味があり、自分たちが信頼できるチームを省内に作ることができる。
また、一度人事に手をつければ、幹部を掌握する上で強い効果がある。大臣の政務三役さえしっかりしていれば、官僚たちと正しい信頼関係をつくることができるはずだ。
(現状維持に砕身している人に指示をしても、なかなか動かないどころか、怪文書やリークまでされたりします。その中で、人事権をにぎり、三役で明確に指示するのは、彼らを動かす上で重要です。)
鳩山総理は、かつて、「(各省庁の)局長クラス以上には辞表を提出してもらいたい」と発言していた。政権を取って1~2か月のうちにこれを実行すべきだった。(抵抗はあるにせよ、スピード感をもてば、組織的抵抗は避けやすいと思います。先手必勝のようです。)
政権を取ったら、早急に「幹部人材の見極め」と「抜本的な再配置」を行い、政治主導できる体制を整えるべきである。
2.現在、週2回、30分の「閣議」を、2~3時間以上、できれば半日程度行い、閣僚が認識を共有して、真剣に議論し物事を決める場にする。大臣の時間がないなら夕食を兼ねたり、土日開催ででも行ったほうがよい。集団合宿も勧める。
また、政務三役の大部屋を内閣府本府などにつくり、大部屋にいつもいて、空き時間に互いが情報交換できるようにすべき。
(これは当時相当警戒されたようです。閣僚、三役が相談・連携することはとても大切だと思います。)
民主党の事業仕分けでも、財務省の「行政刷新会議」に丸投げするのでなく、閣僚たちが、どういうムダをなくすのか大方針を決定し、そのサポート機関として仕分けチームを位置づけるべきだった。
(大方針を示し、何から手を付けるのかをしっかりと政治家が指示するということ。)
また、各省との軋轢が起こる可能性があるので、閣僚と国家戦略局や行政刷新会議の役人が、内閣の一員という意識を持つことが必要。
そうすれば、官邸が”司令塔”となり閣僚たちを(省庁の反発に対し)援護射撃する新しい政治主導体制を確立できるだろう。
3.「人事院」と「身分保障」を廃止し、「官僚は特別」論を駆逐する。
公務員に協約締結権と争議権の両方を付与し、そのかわり、「人事院」を廃止する。
身分保障も、幹部から廃止していくべき。
(私は、人事院廃止には反対で、単なる組織内のコストや効率の評価でなく、その人の仕事が国民のために役立っているかの評価や、介護職員や保育士の公務員化んど、むしろ住民に質・量の提供が必要なサービス拡充も検討すべきだと思います。)
4.過去の失敗から改革の戦術論を知るべき
改革の「全体像」を描きつつ、「急所」から改革する。
官僚がいう他の制度も議論して行うという「先送り論」、逆に一部の個別論で終わる「トカゲの尻尾切り」に注意する。
「全体像」としては、現状に対応できる民間含め優秀な人材の確保・育成や規制改革含め、設計図を描くこと、「急所」は「幹部の人事制度改革」や「労働基本権の拡大」など。
強い抵抗が予想される改革には、ネット中継などプロセスを公開すること。かつて、官民人材交流センター懇談会や基本法制定プロセスで、国民の前に議論をさらして改革を進めた。
5.脱官僚に足る政治家を揃えよ。
脱官僚に足る政治家を揃えることが長期的な脱官僚を実現するために必要。政治家の中長期的な観点での人材の確保・育成が重要である。
例えばイギリスでは、議会折衝と政策を担う政治家を分けて人材育成している。
また、政民の人物流動化もすすめるべき。
これまでの失敗を踏まえた、行政改革で注意すべき事項は上記ですが、何より、政治家や官僚たちが日本をよくしたいという志を持つことが最も必要だと思います。
この記事は、政治経済記事を担当している知念敦によるものです。
(この危機に、日本の為政者たちが気づくかがまず大事です)
官僚機構は、平成以降、様々な改革が試みられましたが、これまで温存されてきました。
そうして今の日本の行政機構は、コロナ一つとっても、東アジア、東南アジアの国が迅速に対応している中、日本は外圧や業界もあり、判断ができなくなっているような状況があります。
これまで霞が関の仕事は、欧米の先進的な法制度を翻訳するような仕事が多かったのですが、現在、技術流出や企業買収など、技術戦、国際競争が激化し、TPP含め海外企業や中国などの戦略にほとんど対応できなくなっています。
これまでの翻訳と違い、「政策の分析・検討の仕事」が高度化する中、政府内に、志があり現状に対応できる頭脳集団が必要です。民間企業、海外からも、志ある優秀な人材の登用し、政策決定や実施に活かすことが必要です。
これまで、橋本、小泉、安倍、福田、麻生政権、民主党の鳩山政権が、保革問わず脱官僚の取組をしてきましたが、省庁のごまかし作戦や時間経過作戦が勝り、かなり温存されています。
実は、第一次安倍内閣は公務員制度改革に本格的に取り組み、天下りの根絶のため、「官民人材交流センター」あっせんへの一元化の法案を成立させました。(その後は十分機能していませんが)
その後、福田内閣では、「国家公務員制度改革基本法」、麻生内閣では「内閣人事局」法案提出、
そして鳩山内閣では、「事務次官会議の廃止」「国家戦略局」「行政刷新会議」「国家戦略担当大臣」の設置などを行っていました。
第一次安倍内閣は、実は、天下り根絶を中心に、公務員制度改革に尽力しており、その後変節した可能性もありますが、本来はそういう意識を持っていたと思います。
行政改革の失敗に学び、どのように変えたらいいのかについて。
自民党、民主党が道半ばの「脱官僚」の失敗をもとに、今後の内閣へのメッセージとして、下記5カ条が示されており、中央省庁はもとより、地方行政の改革にも使える重要なノウハウだと思いますので、示します。
官僚のレトリック 原英史著(p208~222)より
「脱官僚」を実現するための5カ条
1.官僚を使いこなす前に、官僚を選べ
真っ先にやることは、使える幹部を選別し、一緒に国の再生に取り組める人物を抜擢・登用することである。「幹部人材の見極め」と「抜本的な再配置」を最初に行うべきである。
人材を選ぶことは意味があり、自分たちが信頼できるチームを省内に作ることができる。
また、一度人事に手をつければ、幹部を掌握する上で強い効果がある。大臣の政務三役さえしっかりしていれば、官僚たちと正しい信頼関係をつくることができるはずだ。
(現状維持に砕身している人に指示をしても、なかなか動かないどころか、怪文書やリークまでされたりします。その中で、人事権をにぎり、三役で明確に指示するのは、彼らを動かす上で重要です。)
鳩山総理は、かつて、「(各省庁の)局長クラス以上には辞表を提出してもらいたい」と発言していた。政権を取って1~2か月のうちにこれを実行すべきだった。(抵抗はあるにせよ、スピード感をもてば、組織的抵抗は避けやすいと思います。先手必勝のようです。)
政権を取ったら、早急に「幹部人材の見極め」と「抜本的な再配置」を行い、政治主導できる体制を整えるべきである。
2.現在、週2回、30分の「閣議」を、2~3時間以上、できれば半日程度行い、閣僚が認識を共有して、真剣に議論し物事を決める場にする。大臣の時間がないなら夕食を兼ねたり、土日開催ででも行ったほうがよい。集団合宿も勧める。
また、政務三役の大部屋を内閣府本府などにつくり、大部屋にいつもいて、空き時間に互いが情報交換できるようにすべき。
(これは当時相当警戒されたようです。閣僚、三役が相談・連携することはとても大切だと思います。)
民主党の事業仕分けでも、財務省の「行政刷新会議」に丸投げするのでなく、閣僚たちが、どういうムダをなくすのか大方針を決定し、そのサポート機関として仕分けチームを位置づけるべきだった。
(大方針を示し、何から手を付けるのかをしっかりと政治家が指示するということ。)
また、各省との軋轢が起こる可能性があるので、閣僚と国家戦略局や行政刷新会議の役人が、内閣の一員という意識を持つことが必要。
そうすれば、官邸が”司令塔”となり閣僚たちを(省庁の反発に対し)援護射撃する新しい政治主導体制を確立できるだろう。
3.「人事院」と「身分保障」を廃止し、「官僚は特別」論を駆逐する。
公務員に協約締結権と争議権の両方を付与し、そのかわり、「人事院」を廃止する。
身分保障も、幹部から廃止していくべき。
(私は、人事院廃止には反対で、単なる組織内のコストや効率の評価でなく、その人の仕事が国民のために役立っているかの評価や、介護職員や保育士の公務員化んど、むしろ住民に質・量の提供が必要なサービス拡充も検討すべきだと思います。)
4.過去の失敗から改革の戦術論を知るべき
改革の「全体像」を描きつつ、「急所」から改革する。
官僚がいう他の制度も議論して行うという「先送り論」、逆に一部の個別論で終わる「トカゲの尻尾切り」に注意する。
「全体像」としては、現状に対応できる民間含め優秀な人材の確保・育成や規制改革含め、設計図を描くこと、「急所」は「幹部の人事制度改革」や「労働基本権の拡大」など。
強い抵抗が予想される改革には、ネット中継などプロセスを公開すること。かつて、官民人材交流センター懇談会や基本法制定プロセスで、国民の前に議論をさらして改革を進めた。
5.脱官僚に足る政治家を揃えよ。
脱官僚に足る政治家を揃えることが長期的な脱官僚を実現するために必要。政治家の中長期的な観点での人材の確保・育成が重要である。
例えばイギリスでは、議会折衝と政策を担う政治家を分けて人材育成している。
また、政民の人物流動化もすすめるべき。
これまでの失敗を踏まえた、行政改革で注意すべき事項は上記ですが、何より、政治家や官僚たちが日本をよくしたいという志を持つことが最も必要だと思います。
この記事は、政治経済記事を担当している知念敦によるものです。