南沙、西沙、東南アジアの民族紛争の状況について
- 2017/08/09
- 14:05
東南アジア諸国連合の会合が8日に終わり、南シナ海問題では、解決に向けた「行動規範」の枠組みを中国とASEANが承認したとの報道がありました。
一方で、ベトナムと中国では、利害の不一致があったようですが、このような形で、行動規範含め、折り合いをつけること、それに向けて話し合いを繰り返していくことが大切だと考えます。
そこで北朝鮮の核・ミサイル開発についても協議がされたようですが、北朝鮮問題が、アジアの不安定化の引き金になりかねないと各国が認識し、各国が協力して意図的な緊張を避け、北朝鮮と米国を良い方向へ向けるよう努力することが必要です。
しかし、近年の南沙関連報道を見ると、今年4月にフィリピンが南沙諸島の9か所の島に軍隊の宿舎、下水処理施設などを作ることを命じています。また、同7月には、ベトナムが南沙諸島の石油掘削を、中国の脅しを受けて中止。2014年には南沙石油利権をめぐって中国船がベトナム船に衝突する、などの事件が起きています。
今年7月には中国が主張する「九段線」に反発し、インドネシア、ベトナム、フィリピンも同海域に独自の名前をつけ、領有権を主張しています。
中国は西沙で映画館や下水道施設など生活関連施設を建設しています。
このまま互いが基地やインフラを造り、早い者勝ちのように行動をエスカレートさせれば、また2014年の船の衝突などのような突発的な緊張にも繋がりかねません。
例えば、基本的に各国に近い領有は認める、ベトナムにクアテロン礁を与える、フィリピンにミスチーフ礁を与える、スカボロー礁は中国に与えるなど、互いが譲歩できるラインをつめていくことも必要と考えます。
また、近年、シリアなどからIS(イスラム国)の勢力が流入しており、イスラム圏で、貧困や格差などに不満を持つ人々が、IS組織に取り込まれ、フィリピン、マレーシア、インドネシアなどでISのテロを起こしてきている状況があります。
そしてこれが日本にも流れかねない状況があり、なおさら注意が必要です。
以前の記事より
フィリピン、マレーシア、インドネシア等におけるISによる犯罪、テロ 関連
http://inorinowa2.blog.fc2.com/blog-entry-146.html
そして、ここでは、特にフィリピン、マレーシア、インドネシアでこれまでどのような民族対立があったのかについて書きたいと思います。
下記は、テロ解説の本からですが、本当に警告的な内容となっており、重要と思われますので、示します。こうならないように関係国では注意・警戒が必要です。
世界の「テロ組織」と「過激派」がよくわかる本(2016年3月 ワールドミリタリー研究会著)p97より
「東南アジアにもIS(イスラム国)の市部ができる可能性が」
ナイジェリア(アフリカの国)のイスラム過激派、ボコ・ハラムがISに忠誠を誓い、ISの「西アフリカ州」を名乗っている。
これと同様に近い将来、ISの「東南アジア州」が設立される可能性があるという指摘がある。
東南アジアにはインドネシアのジャマ-イスラミア、フィリピンのアブ・サヤフ・グループをはじめ、イスラム過激派がいくつも存在する。
マレーシアでもイスラム過激派によるものと見られるテロ事件(ISとみられる)が起こっている。
そうしたテロ組織が統合して、ISに参加する計画があるらしいのだ。ISの支部となることによって、資金援助などが期待できるという。日本からも身近な東南アジアの地にISの支部ができるとなれば、ますますテロの脅威が高まってくる。
(上記本より以上)
「目からウロコの民族・宗教紛争」という本(2002年4月3日 島崎晋著)からも紹介します。
(この本からしても、特に、宗教(特にキリスト教、イスラム教)、民族(現地住民と入植者)、経済格差(入植者、支配者が裕福で現地住民やイスラム系が貧困)により、紛争が起こることが多いです。
実際には、植民地政策的に、宗教、民族、格差を煽って、争いが続けられた地域も多いです。)
上記本フィリピンの反政府運動について(P226~)から抜粋。
「フィリピンは、世界で最も誘拐事件が多発しているところである。
フィリピンで反政府運動を行っている組織といえば、これまで共産ゲリラなどであったが、今やムスリム・ゲリラのほうがはるかに盛んな活動を展開させており、外国人や裕福なキリスト教徒を狙った誘拐事件のほとんどはその犯行である。
15世紀頃に海外貿易が盛んになるとイスラム教がフィリピン全島に広まり、16世紀以降、スペインの統治下でカトリック(キリスト教)化が進む中、南部のムスリム(モロ族)は、3世紀にもわたってこのカトリックに抵抗した。
カトリック住民にしてみれば、スペイン人から、ムスリムへの差別と偏見が植え付けられていた。双方に大きな意識のズレのあるまま幾たびの衝突が繰り返されていくうちに、抜き差しならない憎悪と対立の関係が形成されてしまった。(異なる宗教の流入、それに伴う異民族への差別が対立を助長させてきた)
この問題はこの後のアメリカ統治時代(19世紀末)、独立後の共和国時代を通じていっそう深刻なものへと化してゆく。
歴代の共和党政府がモロ族への露骨な差別政策をとり、開発から取り残された南部は国内で最も貧しい地域と化し、わすかな商業や金融もカトリック住民たちに握られ、モロ族は貧窮のどん底にあえぐ状況になってしまった。モロ族が不満を爆発させ、リビア、サウジアラビアの支援を受け、「モロ民族解放戦線」が1970年代から武装闘争を始めた。この後、長期戦により、政府も解放戦線も疲弊し、1996年にようやく和平合意が成立した。」
(以降はウイキペディア「アブ・サヤフ」より)
しかし、先の和平合意は2000年に破棄。
過激派組織「アブ・サヤフ」が1991年に組織され、フィリピンのミンダナオ島、インドネシア、マレーシア、タイ、ミャンマーなどにイスラム教で統治する国家設立を目指して武装闘争を開始した。
一般市民に爆弾攻撃、暗殺、誘拐・監禁、身代金要求を繰り返し、現在マレーシア、インドネシアへも拡大している。
2014年頃からは、IS(イスラム国)の影響下に入り始めた。2017年5月にフィリピン軍と交戦状態となりアブ・サヤフ側に多数の死者が出たが、死者の中にマレーシア人、インドネシア人、シンガポール人など6人の外国人戦闘員が確認されている。
マレーシア民族問題について
マレー人は農業などの一次産業、華人とインド人には第2次(工業)、3次産業(サービス業)に従事する者が多く、マレー人と華人、インド人には貧富や教育などで格差があった。近年、マレーシア・イスラム党の力が強まり、マレー人と華人の歩み寄りが図られてきている。(つまりマレーと華人の歩み寄りは、イスラム勢が勢力を増しているためであり、ISの入り込む余地が拡大してきているということです。)
インドネシアの分離独立問題について
スマトラ島の北端にあるアチェ特別州は、インドネシアの中でも最も厳格なイスラム圏で、イスラム信仰を支えにオランダへの抵抗を制圧される(1902年)まで続けた。
自由アチェ運動による抵抗は最も激しかったが、一体何が彼らを闘いに赴かせているのか。
それはイスラムへの信仰だけで説明がつくものではなく、中央政府による収奪や国軍による理不尽な暴力に対する反発の方が大きな比重を占めているのかもしれない。
同地が天然ガス、石油の主産地でありながら、その利益が地元にほとんど還元されておらず、こうした経済的収奪に対する不満が非常に大きいからである。
イリアンジャヤとは、ニューギニア島西半分のことで、治安部隊と住民との間で衝突が絶えない。東ティモールは、弾圧されていたが2002年にインドネシアの占領から独立した。
東南アジアの、特に上記に上げた3ヶ国では、すでにIS(イスラム国)が入り込んでおり、貧富の格差、宗教、民族への差別があることから、各国の情報共有・連携、格差の解消が必要となっています。
入植者が差別や格差の助長(放置)が、イスラムへの差別や不満を生んできました。
この格差解消に取り組むことが21世紀の平和のために必要と考えます。
この記事は、政治経済を担当しているA.Cによるものです。
一方で、ベトナムと中国では、利害の不一致があったようですが、このような形で、行動規範含め、折り合いをつけること、それに向けて話し合いを繰り返していくことが大切だと考えます。
そこで北朝鮮の核・ミサイル開発についても協議がされたようですが、北朝鮮問題が、アジアの不安定化の引き金になりかねないと各国が認識し、各国が協力して意図的な緊張を避け、北朝鮮と米国を良い方向へ向けるよう努力することが必要です。
しかし、近年の南沙関連報道を見ると、今年4月にフィリピンが南沙諸島の9か所の島に軍隊の宿舎、下水処理施設などを作ることを命じています。また、同7月には、ベトナムが南沙諸島の石油掘削を、中国の脅しを受けて中止。2014年には南沙石油利権をめぐって中国船がベトナム船に衝突する、などの事件が起きています。
今年7月には中国が主張する「九段線」に反発し、インドネシア、ベトナム、フィリピンも同海域に独自の名前をつけ、領有権を主張しています。
中国は西沙で映画館や下水道施設など生活関連施設を建設しています。
このまま互いが基地やインフラを造り、早い者勝ちのように行動をエスカレートさせれば、また2014年の船の衝突などのような突発的な緊張にも繋がりかねません。
例えば、基本的に各国に近い領有は認める、ベトナムにクアテロン礁を与える、フィリピンにミスチーフ礁を与える、スカボロー礁は中国に与えるなど、互いが譲歩できるラインをつめていくことも必要と考えます。
また、近年、シリアなどからIS(イスラム国)の勢力が流入しており、イスラム圏で、貧困や格差などに不満を持つ人々が、IS組織に取り込まれ、フィリピン、マレーシア、インドネシアなどでISのテロを起こしてきている状況があります。
そしてこれが日本にも流れかねない状況があり、なおさら注意が必要です。
以前の記事より
フィリピン、マレーシア、インドネシア等におけるISによる犯罪、テロ 関連
http://inorinowa2.blog.fc2.com/blog-entry-146.html
そして、ここでは、特にフィリピン、マレーシア、インドネシアでこれまでどのような民族対立があったのかについて書きたいと思います。
下記は、テロ解説の本からですが、本当に警告的な内容となっており、重要と思われますので、示します。こうならないように関係国では注意・警戒が必要です。
世界の「テロ組織」と「過激派」がよくわかる本(2016年3月 ワールドミリタリー研究会著)p97より
「東南アジアにもIS(イスラム国)の市部ができる可能性が」
ナイジェリア(アフリカの国)のイスラム過激派、ボコ・ハラムがISに忠誠を誓い、ISの「西アフリカ州」を名乗っている。
これと同様に近い将来、ISの「東南アジア州」が設立される可能性があるという指摘がある。
東南アジアにはインドネシアのジャマ-イスラミア、フィリピンのアブ・サヤフ・グループをはじめ、イスラム過激派がいくつも存在する。
マレーシアでもイスラム過激派によるものと見られるテロ事件(ISとみられる)が起こっている。
そうしたテロ組織が統合して、ISに参加する計画があるらしいのだ。ISの支部となることによって、資金援助などが期待できるという。日本からも身近な東南アジアの地にISの支部ができるとなれば、ますますテロの脅威が高まってくる。
(上記本より以上)
「目からウロコの民族・宗教紛争」という本(2002年4月3日 島崎晋著)からも紹介します。
(この本からしても、特に、宗教(特にキリスト教、イスラム教)、民族(現地住民と入植者)、経済格差(入植者、支配者が裕福で現地住民やイスラム系が貧困)により、紛争が起こることが多いです。
実際には、植民地政策的に、宗教、民族、格差を煽って、争いが続けられた地域も多いです。)
上記本フィリピンの反政府運動について(P226~)から抜粋。
「フィリピンは、世界で最も誘拐事件が多発しているところである。
フィリピンで反政府運動を行っている組織といえば、これまで共産ゲリラなどであったが、今やムスリム・ゲリラのほうがはるかに盛んな活動を展開させており、外国人や裕福なキリスト教徒を狙った誘拐事件のほとんどはその犯行である。
15世紀頃に海外貿易が盛んになるとイスラム教がフィリピン全島に広まり、16世紀以降、スペインの統治下でカトリック(キリスト教)化が進む中、南部のムスリム(モロ族)は、3世紀にもわたってこのカトリックに抵抗した。
カトリック住民にしてみれば、スペイン人から、ムスリムへの差別と偏見が植え付けられていた。双方に大きな意識のズレのあるまま幾たびの衝突が繰り返されていくうちに、抜き差しならない憎悪と対立の関係が形成されてしまった。(異なる宗教の流入、それに伴う異民族への差別が対立を助長させてきた)
この問題はこの後のアメリカ統治時代(19世紀末)、独立後の共和国時代を通じていっそう深刻なものへと化してゆく。
歴代の共和党政府がモロ族への露骨な差別政策をとり、開発から取り残された南部は国内で最も貧しい地域と化し、わすかな商業や金融もカトリック住民たちに握られ、モロ族は貧窮のどん底にあえぐ状況になってしまった。モロ族が不満を爆発させ、リビア、サウジアラビアの支援を受け、「モロ民族解放戦線」が1970年代から武装闘争を始めた。この後、長期戦により、政府も解放戦線も疲弊し、1996年にようやく和平合意が成立した。」
(以降はウイキペディア「アブ・サヤフ」より)
しかし、先の和平合意は2000年に破棄。
過激派組織「アブ・サヤフ」が1991年に組織され、フィリピンのミンダナオ島、インドネシア、マレーシア、タイ、ミャンマーなどにイスラム教で統治する国家設立を目指して武装闘争を開始した。
一般市民に爆弾攻撃、暗殺、誘拐・監禁、身代金要求を繰り返し、現在マレーシア、インドネシアへも拡大している。
2014年頃からは、IS(イスラム国)の影響下に入り始めた。2017年5月にフィリピン軍と交戦状態となりアブ・サヤフ側に多数の死者が出たが、死者の中にマレーシア人、インドネシア人、シンガポール人など6人の外国人戦闘員が確認されている。
マレーシア民族問題について
マレー人は農業などの一次産業、華人とインド人には第2次(工業)、3次産業(サービス業)に従事する者が多く、マレー人と華人、インド人には貧富や教育などで格差があった。近年、マレーシア・イスラム党の力が強まり、マレー人と華人の歩み寄りが図られてきている。(つまりマレーと華人の歩み寄りは、イスラム勢が勢力を増しているためであり、ISの入り込む余地が拡大してきているということです。)
インドネシアの分離独立問題について
スマトラ島の北端にあるアチェ特別州は、インドネシアの中でも最も厳格なイスラム圏で、イスラム信仰を支えにオランダへの抵抗を制圧される(1902年)まで続けた。
自由アチェ運動による抵抗は最も激しかったが、一体何が彼らを闘いに赴かせているのか。
それはイスラムへの信仰だけで説明がつくものではなく、中央政府による収奪や国軍による理不尽な暴力に対する反発の方が大きな比重を占めているのかもしれない。
同地が天然ガス、石油の主産地でありながら、その利益が地元にほとんど還元されておらず、こうした経済的収奪に対する不満が非常に大きいからである。
イリアンジャヤとは、ニューギニア島西半分のことで、治安部隊と住民との間で衝突が絶えない。東ティモールは、弾圧されていたが2002年にインドネシアの占領から独立した。
東南アジアの、特に上記に上げた3ヶ国では、すでにIS(イスラム国)が入り込んでおり、貧富の格差、宗教、民族への差別があることから、各国の情報共有・連携、格差の解消が必要となっています。
入植者が差別や格差の助長(放置)が、イスラムへの差別や不満を生んできました。
この格差解消に取り組むことが21世紀の平和のために必要と考えます。
この記事は、政治経済を担当しているA.Cによるものです。