共謀罪の何が危険なのかについて(組織犯罪処罰法改正案について)
- 2017/03/03
- 07:52
過去に3回も廃案となってきた、共謀罪ですが、今、まさに3月10日、13日頃の閣議決定に向けて、与野党が共謀罪の法案を検討しているところです。(平成29年3月2日現在)この法案の何が怖いかというと、刑法の大原則「行為主義」がくずれるということにあります。これまでの刑法では、犯罪「行為」をして、はじめて裁かれるものでした。これが、政府が判断した集団が、犯罪を考えたり、計画したり、考え、それに伴って何かの準備と...
過去に3回も廃案となってきた、共謀罪ですが、今、まさに3月10日、13日頃の閣議決定に向けて、与野党が共謀罪の法案を検討しているところです。(平成29年3月2日現在)
この法案の何が怖いかというと、
刑法の大原則「行為主義」がくずれるということにあります。
これまでの刑法では、犯罪「行為」をして、はじめて裁かれるものでした。
これが、政府が判断した集団が、犯罪を考えたり、計画したり、考え、それに伴って何かの準備ととれる行動をしたと判断すれば、逮捕や捜査の対象とすることができる、という法案です。
具体的には、資金や物品の手配、関係場所の下見、「その他」の実行準備行為をしたときとあり、この「その他」は捜査機関で判断されるため、これは大きな意味を持つと思います。
要するに、犯罪行為をしなくても、それをしうる行為をしたと判断されれば、逮捕されうる。
そうなれば、国民が逮捕されない権利を大きく阻害するのは否めないと思います。萎縮に繋がります。
(これまでは、逮捕には、包丁や拳銃の調達などの予備罪の要件があるくらいでした。)
その意味で、テロの文字を入れたとか、適用犯罪を277件に絞ったというのなどは、閣議決定をとにかく進めるための、既定路線であった可能性もあり、本当にこれが3月13日に閣議決定してしまうのか、与党合意に至ってしまうのか、国民は注意が必要と考えます。
「テロ」明記へ修正検討
共同通信 2017/3/2 11:36
https://this.kiji.is/209862094158233604?c=39546741839462401
政府、与党は、共謀罪の構成要件を変えた組織犯罪処罰法改正案について「テロリズム」の文言を明記し修正する方向で検討に入った。関係者が2日明らかにした。法案に対する世論の懸念が根強い現状を踏まえた対応。与野党から「テロ」の表記がないことを疑問視する指摘があり、2020年東京五輪・パラリンピックを見据えたテロ対策との目的を明確化すべきだとの判断に傾いた。
政府は10日の閣議決定を目指す方針。ただ与党内では時期にこだわらず、慎重に議論すべきだとの意見も根強い。13日以降にずれ込む可能性もある。
2017年2月28日 中日新聞 朝刊より 抜粋
「共謀罪」内心処罰の恐れ 全容判明
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2017022802000084.html
政府が創設を検討している「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の全容が、関係者への取材で明らかになった。(中略)
新たな法案でも捜査機関の裁量で解釈が拡大され、内心の処罰につながる恐れや一般市民も対象になる余地を残しており、共謀罪の本質的な懸念は変わっていない。
本紙が入手した条文案によると、共同の目的が犯罪を実行することにある「組織的犯罪集団」の活動として、その実行組織によって行われる犯罪を二人以上で計画した者を処罰対象としている。 また、計画に参加した者の誰かが資金や物品の手配、関係場所の下見、「その他」の実行準備行為をしたときに処罰すると規定。対象犯罪は二百七十七とした。
政府はこれまでの国会答弁で「合意に加えて、準備行為がなければ逮捕令状は出ないように立法する」などと説明してきた。しかし、条文は「実行準備行為をしたときに」処罰すると規定しており、合意したメンバーの誰かが準備行為をしなければ逮捕できないという記載はない。
準備行為がなければ起訴はできないという意味にすぎず、計画や合意の疑いがある段階で逮捕や家宅捜索ができる可能性が残ることになる。捜査機関の運用に委ねられる部分が多く、計画や合意という曖昧で不明確なものが捜査の根拠になる。合意の段階で捜査できるのは、本質的には内心の処罰につながる共謀罪と変わらない。
「組織的犯罪集団」は、政府統一見解では、普通の団体が性質を変えた場合にも認定される可能性がある。団体の性質が変わったかどうかを判断するのは主に捜査機関。その裁量次第で市民団体や労働組合などが処罰対象となる余地がある。
徹底批判「共謀罪」/「内心処罰」変わらず/「個人の尊厳」に重大な脅威
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-01-14/2017011401_02_1.html
2017年1月14日 9時24分 しんぶん赤旗 より一部抜粋
何より、共謀罪の最も危険な本質は、犯罪は行為であり、思想や言論は処罰しないという近代刑法の根本原則を覆すことです。共謀罪という特別な犯罪類型を新たに創出するものではなく、幅広く一般犯罪について「共謀」段階から処罰の対象にするものです。
国民を監視
犯罪の計画や相談、合意をしただけで処罰することは、警察をはじめ国家権力が日常的に国民を広く監視することになります。
「個人の尊厳」と基本的人権が国家権力によって不断に脅かされる状況となります。共謀罪は、憲法の基本的人権の尊重との関係で、重大な問題をはらみます。とりわけ、市民運動団体や政党の活動に重大な侵害、萎縮的影響をもたらす恐れがあります。(中略)
資金だけで
政府は、相談=共謀のほかに「準備行為」を必要とすれば限定になるとしています。しかし、「準備行為」とは非常に漠然と幅広いものです。
「予備罪」ならば、犯罪の実行にふさわしい危険を備えたものであることが必要とされます。例えば、殺人罪なら、包丁や拳銃を調達するなどです。
しかし「準備行為」は、昨年9月の共謀罪法案の政府資料で「予備罪の予備のように一定の危険性を備えている必要性はなく」とされ、「資金又は物品の取得」で足りるとされています。
これでは共謀に加え「ATMでお金をおろす行為」があれば処罰されます。お金をおろすこと自体は犯罪ではありえず、客観的危険性もないので、結局は、共謀に基づき犯罪をする意思を持っていることで処罰することになるのです。(中祖寅一)
(補足:資金手配以外に、「その他」の実行準備行為も規定され、その内容は捜査機関により判断されると考えられます。)
この記事は、政治経済を担当しているA.Cによる記事です。
この法案の何が怖いかというと、
刑法の大原則「行為主義」がくずれるということにあります。
これまでの刑法では、犯罪「行為」をして、はじめて裁かれるものでした。
これが、政府が判断した集団が、犯罪を考えたり、計画したり、考え、それに伴って何かの準備ととれる行動をしたと判断すれば、逮捕や捜査の対象とすることができる、という法案です。
具体的には、資金や物品の手配、関係場所の下見、「その他」の実行準備行為をしたときとあり、この「その他」は捜査機関で判断されるため、これは大きな意味を持つと思います。
要するに、犯罪行為をしなくても、それをしうる行為をしたと判断されれば、逮捕されうる。
そうなれば、国民が逮捕されない権利を大きく阻害するのは否めないと思います。萎縮に繋がります。
(これまでは、逮捕には、包丁や拳銃の調達などの予備罪の要件があるくらいでした。)
その意味で、テロの文字を入れたとか、適用犯罪を277件に絞ったというのなどは、閣議決定をとにかく進めるための、既定路線であった可能性もあり、本当にこれが3月13日に閣議決定してしまうのか、与党合意に至ってしまうのか、国民は注意が必要と考えます。
「テロ」明記へ修正検討
共同通信 2017/3/2 11:36
https://this.kiji.is/209862094158233604?c=39546741839462401
政府、与党は、共謀罪の構成要件を変えた組織犯罪処罰法改正案について「テロリズム」の文言を明記し修正する方向で検討に入った。関係者が2日明らかにした。法案に対する世論の懸念が根強い現状を踏まえた対応。与野党から「テロ」の表記がないことを疑問視する指摘があり、2020年東京五輪・パラリンピックを見据えたテロ対策との目的を明確化すべきだとの判断に傾いた。
政府は10日の閣議決定を目指す方針。ただ与党内では時期にこだわらず、慎重に議論すべきだとの意見も根強い。13日以降にずれ込む可能性もある。
2017年2月28日 中日新聞 朝刊より 抜粋
「共謀罪」内心処罰の恐れ 全容判明
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2017022802000084.html
政府が創設を検討している「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の全容が、関係者への取材で明らかになった。(中略)
新たな法案でも捜査機関の裁量で解釈が拡大され、内心の処罰につながる恐れや一般市民も対象になる余地を残しており、共謀罪の本質的な懸念は変わっていない。
本紙が入手した条文案によると、共同の目的が犯罪を実行することにある「組織的犯罪集団」の活動として、その実行組織によって行われる犯罪を二人以上で計画した者を処罰対象としている。 また、計画に参加した者の誰かが資金や物品の手配、関係場所の下見、「その他」の実行準備行為をしたときに処罰すると規定。対象犯罪は二百七十七とした。
政府はこれまでの国会答弁で「合意に加えて、準備行為がなければ逮捕令状は出ないように立法する」などと説明してきた。しかし、条文は「実行準備行為をしたときに」処罰すると規定しており、合意したメンバーの誰かが準備行為をしなければ逮捕できないという記載はない。
準備行為がなければ起訴はできないという意味にすぎず、計画や合意の疑いがある段階で逮捕や家宅捜索ができる可能性が残ることになる。捜査機関の運用に委ねられる部分が多く、計画や合意という曖昧で不明確なものが捜査の根拠になる。合意の段階で捜査できるのは、本質的には内心の処罰につながる共謀罪と変わらない。
「組織的犯罪集団」は、政府統一見解では、普通の団体が性質を変えた場合にも認定される可能性がある。団体の性質が変わったかどうかを判断するのは主に捜査機関。その裁量次第で市民団体や労働組合などが処罰対象となる余地がある。
徹底批判「共謀罪」/「内心処罰」変わらず/「個人の尊厳」に重大な脅威
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-01-14/2017011401_02_1.html
2017年1月14日 9時24分 しんぶん赤旗 より一部抜粋
何より、共謀罪の最も危険な本質は、犯罪は行為であり、思想や言論は処罰しないという近代刑法の根本原則を覆すことです。共謀罪という特別な犯罪類型を新たに創出するものではなく、幅広く一般犯罪について「共謀」段階から処罰の対象にするものです。
国民を監視
犯罪の計画や相談、合意をしただけで処罰することは、警察をはじめ国家権力が日常的に国民を広く監視することになります。
「個人の尊厳」と基本的人権が国家権力によって不断に脅かされる状況となります。共謀罪は、憲法の基本的人権の尊重との関係で、重大な問題をはらみます。とりわけ、市民運動団体や政党の活動に重大な侵害、萎縮的影響をもたらす恐れがあります。(中略)
資金だけで
政府は、相談=共謀のほかに「準備行為」を必要とすれば限定になるとしています。しかし、「準備行為」とは非常に漠然と幅広いものです。
「予備罪」ならば、犯罪の実行にふさわしい危険を備えたものであることが必要とされます。例えば、殺人罪なら、包丁や拳銃を調達するなどです。
しかし「準備行為」は、昨年9月の共謀罪法案の政府資料で「予備罪の予備のように一定の危険性を備えている必要性はなく」とされ、「資金又は物品の取得」で足りるとされています。
これでは共謀に加え「ATMでお金をおろす行為」があれば処罰されます。お金をおろすこと自体は犯罪ではありえず、客観的危険性もないので、結局は、共謀に基づき犯罪をする意思を持っていることで処罰することになるのです。(中祖寅一)
(補足:資金手配以外に、「その他」の実行準備行為も規定され、その内容は捜査機関により判断されると考えられます。)
この記事は、政治経済を担当しているA.Cによる記事です。