自民党改憲案の仕掛け その3 憲法9条について
- 2016/07/06
- 23:47
現行憲法 第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。 自民党改憲案 第九条日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力...
現行憲法
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
自民党改憲案
第九条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
2
前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
2にあるとおり、例外規定で、自衛権という解釈ができれば、武力による威嚇及び武力の行使はできるという書き方になっています。
自民党は、この自衛権の中には集団的自衛権も含まれると説明しています。
(集団的自衛権は、現在の日米の密約、法律の仕組みから、アメリカの統一指揮権【自衛隊がアメリカの命令で動く】ものとなっており、自衛権による武力行使を認めると、アメリカの指令で戦争に行かされることになってしまっています。)
自民党改憲案
第九条の二
我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
2
国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3
国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。4
前二項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
5
国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。
上記改憲案、第九条の二~五の国防軍に関する項目は、先の本によると「通常の法律で策定すべきもので、憲法で論じる問題ではありません。」とのことです。
特に、(疑義がありますが)自衛権として自民党が解釈している集団的自衛権を、自衛権と認めてしまうと、アメリカが求めれば日本は様々な紛争に参加させられることが考えられるので、改正案の9条は全削除がよく、(集団的)自衛権は絶対憲法に書いてはいけない、とのことです。
上記はミロク会・政治経済記事担当のA.Cが苫米地氏本の内容や現状を元に記述したものです。
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
自民党改憲案
第九条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
2
前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
2にあるとおり、例外規定で、自衛権という解釈ができれば、武力による威嚇及び武力の行使はできるという書き方になっています。
自民党は、この自衛権の中には集団的自衛権も含まれると説明しています。
(集団的自衛権は、現在の日米の密約、法律の仕組みから、アメリカの統一指揮権【自衛隊がアメリカの命令で動く】ものとなっており、自衛権による武力行使を認めると、アメリカの指令で戦争に行かされることになってしまっています。)
自民党改憲案
第九条の二
我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
2
国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3
国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。4
前二項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
5
国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。
上記改憲案、第九条の二~五の国防軍に関する項目は、先の本によると「通常の法律で策定すべきもので、憲法で論じる問題ではありません。」とのことです。
特に、(疑義がありますが)自衛権として自民党が解釈している集団的自衛権を、自衛権と認めてしまうと、アメリカが求めれば日本は様々な紛争に参加させられることが考えられるので、改正案の9条は全削除がよく、(集団的)自衛権は絶対憲法に書いてはいけない、とのことです。
上記はミロク会・政治経済記事担当のA.Cが苫米地氏本の内容や現状を元に記述したものです。
自民党改憲案の仕掛け その2 緊急事態宣言について
- 2016/07/06
- 23:19
緊急事態宣言について 改憲案の緊急事態宣言について、首相(内閣)が、国会や国民の審査なく、さまざまな権限が行使できる内容となっています。改憲案 第九十九条 (緊急事態の宣言の効果) 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができ...
緊急事態宣言について
改憲案の緊急事態宣言について、首相(内閣)が、国会や国民の審査なく、さまざまな権限が行使できる内容となっています。
改憲案 第九十九条 (緊急事態の宣言の効果) 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
改憲案 第九十八条 (緊急事態の宣言)内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
上記は、「総理が非常事態を宣言すれば、閣議で法律を作り、総理大臣が予算編成・支出、処分、各行政機関への指示ができる。」という意味になります。
例えば、消費税の増税、TPP参加、国民の動員、国民の逮捕、拘束、各処分が総理の一存でできるようになります。(実際にナチスでは、緊急事態宣言の後、5000名が拘束、行方不明になっています)
しかもそれは、地震や自然災害、放射能漏れなどを、内閣が緊急事態と認めれば、宣言可能。これが怖いところです。自然災害でも、その要件となりうるからです。
また、同条では、
緊急事態の宣言が発せられた場合、何人も、(中略)国その他公の機関の指示に従わなければならない。
その宣言の効力のある期間、衆議院は解散されない。
としていますので、国民が反発しても、それを続けることができる内容となっています。
ですから、この本には、この98条などの「自然災害その他」だけは絶対に削除しなければいけないものですから、皆さんも積極的に声を上げてください、とのことです。
このように、どの条項が危ない、としっかり言えることはとても大切なことだと思います。
上記はミロク会・政治経済記事担当のA.Cが苫米地氏本の内容や現状を元に記述したものです。
改憲案の緊急事態宣言について、首相(内閣)が、国会や国民の審査なく、さまざまな権限が行使できる内容となっています。
改憲案 第九十九条 (緊急事態の宣言の効果) 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
改憲案 第九十八条 (緊急事態の宣言)内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
上記は、「総理が非常事態を宣言すれば、閣議で法律を作り、総理大臣が予算編成・支出、処分、各行政機関への指示ができる。」という意味になります。
例えば、消費税の増税、TPP参加、国民の動員、国民の逮捕、拘束、各処分が総理の一存でできるようになります。(実際にナチスでは、緊急事態宣言の後、5000名が拘束、行方不明になっています)
しかもそれは、地震や自然災害、放射能漏れなどを、内閣が緊急事態と認めれば、宣言可能。これが怖いところです。自然災害でも、その要件となりうるからです。
また、同条では、
緊急事態の宣言が発せられた場合、何人も、(中略)国その他公の機関の指示に従わなければならない。
その宣言の効力のある期間、衆議院は解散されない。
としていますので、国民が反発しても、それを続けることができる内容となっています。
ですから、この本には、この98条などの「自然災害その他」だけは絶対に削除しなければいけないものですから、皆さんも積極的に声を上げてください、とのことです。
このように、どの条項が危ない、としっかり言えることはとても大切なことだと思います。
上記はミロク会・政治経済記事担当のA.Cが苫米地氏本の内容や現状を元に記述したものです。
自民党改憲案の仕掛け その1 自民党改憲案と国民主権
- 2016/07/06
- 23:03
自民党改憲案について その1 自民党改憲案と国民主権苫米地英人氏著「憲法改正に仕掛けられた 4つのワナ」(2013年10月19日)よりほとんどインターネット上でしか見ることができませんが、自民党改憲案の中身を知ることで、日本国憲法の何を、国民の主権などをどう変えようとしているのかが見えますので、一部示します。実は、自民党改憲案、2012年から公開されています。この自民党改憲案、下記で示しますが、かなり...
自民党改憲案について その1 自民党改憲案と国民主権
苫米地英人氏著「憲法改正に仕掛けられた 4つのワナ」(2013年10月19日)より
ほとんどインターネット上でしか見ることができませんが、自民党改憲案の中身を知ることで、日本国憲法の何を、国民の主権などをどう変えようとしているのかが見えますので、一部示します。
実は、自民党改憲案、2012年から公開されています。
この自民党改憲案、下記で示しますが、かなり国の省庁、官僚の権限を増すものとなっています。
今までの安倍首相らの発言からすると、今後、これへの改定が、緊急事態宣言条項、憲法96条などを軸に、本格的に議論される可能性が高いです。
安倍首相は、今年3月の参院予算委員会でも、憲法改定ついて「私の在任中に成し遂げたいと考えている」「先の総選挙でも訴えているわけだから、それを目指したい」と発言しています。
続けて「(憲法改定するには)与党、さらには他党の協力も得なければ難しい」としており今後、「他の党」(「おおさか維新の会」、「日本のこころを大切にする党」、「日本を元気にする会」、「新党改革」、「無所属」など)を取り込んでいくかと考えられます。
また、災害が起こった際、緊急事態宣言条項を憲法に盛り込むべきとも、発言しているので、その方向も検討している可能性があります。
憲法は、「身体の自由、精神の自由、経済の自由」など、重要な権利を規定しています。下記リンクを知ることはとても大切です。
http://www.hello-school.net/harocivics005.html
以下、上記苫米地氏著作などに自民党改憲案の主な問題点として示されていました。
自民党改憲案 http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf
自民党改憲案のQ&A https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/pamphlet/kenpou_qa.pdf
1.憲法前文及び第一条について
「自民党憲法改正草案Q&A」の3には、「現行憲法の前文には、憲法の三大原則のうち「主権在民」と「平和主義」はありますが、『基本的人権の尊重』はありません」としていますが、前文には「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と書かれており、これが基本的人権の内容となっています。
これが改憲草案では消されています。
そして改定案前文の下記の箇所が、国民の主権を奪うような文言となっています。
前文(1)国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
上記のように三権分立に基づいて国民を統治してしまうと、国民主権でなくなってしまいます。
(現行憲法では国民に主権があり、その行使として三権を使うとしています。国民は「統治の対象」ではなく、あくまで「主権者」です。
立法、行政、司法の三権は、国民主権を行使するために分けた権力です。)
これを避けるためには、「正当に選挙された国会を最高機関とし、その国民主権の行使は立法、行政及び司法の三権分立を通じて行われる。」と、「その国民主権の行使は」を入れ、「統治」という言葉を削るなどをし、主権は国民にあることを明確化したほうがよいとのことです。
自民党改憲案の前文 (2).基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
この文案、実は、基本的人権という言葉は入れていますが、上記の通り、これまで前文に入っていた、基本的人権の「具体的内容」が削除されています。
また、「和を尊び、社会全体が国家を形成する」という表現で、意味的には国民の権利・自由を制限しています。
法律で和を尊び、とは、全体に従えと言う意味。
社会全体が国家を形成、は、「社会全体が国家主体なので、個人の人権は軽視してもかまわない」というニュアンス。
これは考えすぎなどではなく、実際に自民党Q&Aでも下記のような回答がされています。
Q36への回答「国民の生命、身体及び財産という大きな人権を守るために、そのため必要な範囲でより小さな人権がやむなく制限されることもあり得るものと考えます」
国のためには個々人の権利は制限される、という内容が書いてあります。
上記はミロク会・政治経済記事担当のA.Cが苫米地氏本の内容や現状を元に記述したものです。
苫米地英人氏著「憲法改正に仕掛けられた 4つのワナ」(2013年10月19日)より
ほとんどインターネット上でしか見ることができませんが、自民党改憲案の中身を知ることで、日本国憲法の何を、国民の主権などをどう変えようとしているのかが見えますので、一部示します。
実は、自民党改憲案、2012年から公開されています。
この自民党改憲案、下記で示しますが、かなり国の省庁、官僚の権限を増すものとなっています。
今までの安倍首相らの発言からすると、今後、これへの改定が、緊急事態宣言条項、憲法96条などを軸に、本格的に議論される可能性が高いです。
安倍首相は、今年3月の参院予算委員会でも、憲法改定ついて「私の在任中に成し遂げたいと考えている」「先の総選挙でも訴えているわけだから、それを目指したい」と発言しています。
続けて「(憲法改定するには)与党、さらには他党の協力も得なければ難しい」としており今後、「他の党」(「おおさか維新の会」、「日本のこころを大切にする党」、「日本を元気にする会」、「新党改革」、「無所属」など)を取り込んでいくかと考えられます。
また、災害が起こった際、緊急事態宣言条項を憲法に盛り込むべきとも、発言しているので、その方向も検討している可能性があります。
憲法は、「身体の自由、精神の自由、経済の自由」など、重要な権利を規定しています。下記リンクを知ることはとても大切です。
http://www.hello-school.net/harocivics005.html
以下、上記苫米地氏著作などに自民党改憲案の主な問題点として示されていました。
自民党改憲案 http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf
自民党改憲案のQ&A https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/pamphlet/kenpou_qa.pdf
1.憲法前文及び第一条について
「自民党憲法改正草案Q&A」の3には、「現行憲法の前文には、憲法の三大原則のうち「主権在民」と「平和主義」はありますが、『基本的人権の尊重』はありません」としていますが、前文には「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と書かれており、これが基本的人権の内容となっています。
これが改憲草案では消されています。
そして改定案前文の下記の箇所が、国民の主権を奪うような文言となっています。
前文(1)国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
上記のように三権分立に基づいて国民を統治してしまうと、国民主権でなくなってしまいます。
(現行憲法では国民に主権があり、その行使として三権を使うとしています。国民は「統治の対象」ではなく、あくまで「主権者」です。
立法、行政、司法の三権は、国民主権を行使するために分けた権力です。)
これを避けるためには、「正当に選挙された国会を最高機関とし、その国民主権の行使は立法、行政及び司法の三権分立を通じて行われる。」と、「その国民主権の行使は」を入れ、「統治」という言葉を削るなどをし、主権は国民にあることを明確化したほうがよいとのことです。
自民党改憲案の前文 (2).基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
この文案、実は、基本的人権という言葉は入れていますが、上記の通り、これまで前文に入っていた、基本的人権の「具体的内容」が削除されています。
また、「和を尊び、社会全体が国家を形成する」という表現で、意味的には国民の権利・自由を制限しています。
法律で和を尊び、とは、全体に従えと言う意味。
社会全体が国家を形成、は、「社会全体が国家主体なので、個人の人権は軽視してもかまわない」というニュアンス。
これは考えすぎなどではなく、実際に自民党Q&Aでも下記のような回答がされています。
Q36への回答「国民の生命、身体及び財産という大きな人権を守るために、そのため必要な範囲でより小さな人権がやむなく制限されることもあり得るものと考えます」
国のためには個々人の権利は制限される、という内容が書いてあります。
上記はミロク会・政治経済記事担当のA.Cが苫米地氏本の内容や現状を元に記述したものです。
参院選 自民党改憲草案④ 「改正」と「緊急事態」について
- 2016/07/06
- 22:27
焦点 自民党改憲草案 ④ 「改正」と「緊急事態」について琉球新報 2016年6月17日 9面より改正 発議、議員過半数に緩和 憲法改正の要件について、現行憲法は96条で、「各議員の総議員の三分の二以上の賛成」で国会が発議し、国民投票で過半数の賛成が必要としている。自民党草案は「総議員の過半数」で国会は次をすると緩和している。 自民党は、「世界的に見ても改正しにくい憲法」「国会での手続きをあまりに厳格...
焦点 自民党改憲草案 ④ 「改正」と「緊急事態」について
琉球新報 2016年6月17日 9面より
改正 発議、議員過半数に緩和
憲法改正の要件について、現行憲法は96条で、「各議員の総議員の三分の二以上の賛成」で国会が発議し、国民投票で過半数の賛成が必要としている。自民党草案は「総議員の過半数」で国会は次をすると緩和している。
自民党は、「世界的に見ても改正しにくい憲法」「国会での手続きをあまりに厳格にするのは、国民が憲法について意思を表明する機会が狭められることになり、主権者である国民の意思を反映しないことになってしまう」と説明する。
安倍晋三首相は3年前、96条改正を強く訴えたが、批判が強まり首長を交代させた敬意がある。国の基本方針を定める憲法は安定性が求められるため、一般の法律よりも厳しい改正要件が課されている。
国会の過半数を制する与党が提案するだけでなく、野党も賛同するような幅広い合意形成が想定されているともいえる。「権力の暴走を防ぐ」という立憲主義の観点から、改正要件の緩和は望ましくないとの意見がある。
緊急事態 権限集中、乱用の恐れ
自民党草案は、外部から武力攻撃を受けたり、大規模災害が起きたりした際に緊急事態を宣言し、首相などに権限を集中させる緊急事態条項を新設するとしている。
内閣が法律と同じ効力を持つ政令を制定でき、地方自治体の長に指示をできると規定。国民に対しては「何人も(国民の生命や財産を守るための)国その他公の機関の指示に従わなければならない」としている。緊急事態の際は衆院を解散せず、任期の延長も可能とする。
ただ、現行の法制でも、災害対策基本法や災害救助法が、国会閉会時の内閣の立法権(緊急政令制定)と、首相が地方自治体の長に指示できることを規定。武力攻撃やテロの場合では、国民保護法や武力攻撃事態法が政府への権限集中などを定めている。
他方、東日本大震災の経験を踏まえ、大災害時にはむしろ自治体への権限移譲こそが必要との声も。「権限集中は乱用の恐れがある」「過度の人権制限が起きかねない」との指摘も出ている。
記事は以上です。
繰り返しますが、国民の基本的人権や自由を保障してきた憲法の改定を、安倍首相は今後行うと再三答弁しています。
琉球新報 2016年6月17日 9面より
改正 発議、議員過半数に緩和
憲法改正の要件について、現行憲法は96条で、「各議員の総議員の三分の二以上の賛成」で国会が発議し、国民投票で過半数の賛成が必要としている。自民党草案は「総議員の過半数」で国会は次をすると緩和している。
自民党は、「世界的に見ても改正しにくい憲法」「国会での手続きをあまりに厳格にするのは、国民が憲法について意思を表明する機会が狭められることになり、主権者である国民の意思を反映しないことになってしまう」と説明する。
安倍晋三首相は3年前、96条改正を強く訴えたが、批判が強まり首長を交代させた敬意がある。国の基本方針を定める憲法は安定性が求められるため、一般の法律よりも厳しい改正要件が課されている。
国会の過半数を制する与党が提案するだけでなく、野党も賛同するような幅広い合意形成が想定されているともいえる。「権力の暴走を防ぐ」という立憲主義の観点から、改正要件の緩和は望ましくないとの意見がある。
緊急事態 権限集中、乱用の恐れ
自民党草案は、外部から武力攻撃を受けたり、大規模災害が起きたりした際に緊急事態を宣言し、首相などに権限を集中させる緊急事態条項を新設するとしている。
内閣が法律と同じ効力を持つ政令を制定でき、地方自治体の長に指示をできると規定。国民に対しては「何人も(国民の生命や財産を守るための)国その他公の機関の指示に従わなければならない」としている。緊急事態の際は衆院を解散せず、任期の延長も可能とする。
ただ、現行の法制でも、災害対策基本法や災害救助法が、国会閉会時の内閣の立法権(緊急政令制定)と、首相が地方自治体の長に指示できることを規定。武力攻撃やテロの場合では、国民保護法や武力攻撃事態法が政府への権限集中などを定めている。
他方、東日本大震災の経験を踏まえ、大災害時にはむしろ自治体への権限移譲こそが必要との声も。「権限集中は乱用の恐れがある」「過度の人権制限が起きかねない」との指摘も出ている。
記事は以上です。
繰り返しますが、国民の基本的人権や自由を保障してきた憲法の改定を、安倍首相は今後行うと再三答弁しています。
参院選 自民党改憲草案③ 「天皇」と「信教の自由」について
- 2016/07/06
- 22:19
焦点 自民党改憲草案 ③ 「天皇」と「信教の自由」について琉球新報 2016年6月15日 7面天皇 「元首」と明文で規定 自民党の草案では、現行憲法で「日本国の象徴」となっている天皇を「元首」と変更している。 大日本帝国憲法は天皇を主権者、国家元首と定めていた。 自民党は外交儀礼上、天皇が元首として扱われていることを理由に「元首であることは紛れもない事実」と説明する。しかし、政府は過去の国会答弁で...
焦点 自民党改憲草案 ③ 「天皇」と「信教の自由」について
琉球新報 2016年6月15日 7面
天皇 「元首」と明文で規定
自民党の草案では、現行憲法で「日本国の象徴」となっている天皇を「元首」と変更している。
大日本帝国憲法は天皇を主権者、国家元首と定めていた。
自民党は外交儀礼上、天皇が元首として扱われていることを理由に「元首であることは紛れもない事実」と説明する。しかし、政府は過去の国会答弁で、元首かどうかは「定義いかんに帰する問題」としている。
天皇は、外国の大使の接受(接見)などをしている。
ただ、憲法の学説上、元首の要件として重視するのは、そうした儀礼的な行為だけでなく、条約締結といった実質的に国家を代表する権能(権利を主張し行使できる能力)だ。この観点からすると、日本の元首は内閣か内閣総理大臣ということになる。
天皇を元首として憲法に明文規定することは、天皇の権能を実質化、拡大させる恐れがある、との指摘も出ている。
信教の自由 「社会的儀礼」を容認
信教の自由と政教分離を定めた20条で自民党草案は、国などが宗教的活動をしてはならない、との規定に「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない」とする一文を加えた。自民党は「地鎮祭に当たって公費から玉串料を支出するなどの問題が現実に解決される」と説明する。
大日本帝国憲法は「神社は宗教ではない」と特権的な地位を与えたが、現行憲法はその反省を踏まえ、政教分離を徹底した。この原則に反しないかが訴訟で争われたのが、公費から神社への玉串料を納めるなどした事例。津地鎮祭訴訟の最高裁判決(1977年)は「目的が宗教的意義を持ち、効果が宗教への援助、助長になるような行為」は違憲との基準を示した上で、この件は合憲と判断。一方、愛媛県玉串料訴訟の最高裁判決(97年)は支出を違憲とした。
草案に対して、首相らが靖国神社を公式参拝しやすくする狙いがある、との見方も出ている。
琉球新報 2016年6月15日 7面
天皇 「元首」と明文で規定
自民党の草案では、現行憲法で「日本国の象徴」となっている天皇を「元首」と変更している。
大日本帝国憲法は天皇を主権者、国家元首と定めていた。
自民党は外交儀礼上、天皇が元首として扱われていることを理由に「元首であることは紛れもない事実」と説明する。しかし、政府は過去の国会答弁で、元首かどうかは「定義いかんに帰する問題」としている。
天皇は、外国の大使の接受(接見)などをしている。
ただ、憲法の学説上、元首の要件として重視するのは、そうした儀礼的な行為だけでなく、条約締結といった実質的に国家を代表する権能(権利を主張し行使できる能力)だ。この観点からすると、日本の元首は内閣か内閣総理大臣ということになる。
天皇を元首として憲法に明文規定することは、天皇の権能を実質化、拡大させる恐れがある、との指摘も出ている。
信教の自由 「社会的儀礼」を容認
信教の自由と政教分離を定めた20条で自民党草案は、国などが宗教的活動をしてはならない、との規定に「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない」とする一文を加えた。自民党は「地鎮祭に当たって公費から玉串料を支出するなどの問題が現実に解決される」と説明する。
大日本帝国憲法は「神社は宗教ではない」と特権的な地位を与えたが、現行憲法はその反省を踏まえ、政教分離を徹底した。この原則に反しないかが訴訟で争われたのが、公費から神社への玉串料を納めるなどした事例。津地鎮祭訴訟の最高裁判決(1977年)は「目的が宗教的意義を持ち、効果が宗教への援助、助長になるような行為」は違憲との基準を示した上で、この件は合憲と判断。一方、愛媛県玉串料訴訟の最高裁判決(97年)は支出を違憲とした。
草案に対して、首相らが靖国神社を公式参拝しやすくする狙いがある、との見方も出ている。
参院選 自民党改憲草案② 「国民の義務」と「公益と公の秩序」について
- 2016/07/06
- 22:09
焦点 自民党改憲草案 ② 「国民の義務」と「公益と公の秩序」について琉球新報 2016年6月14日 7面国民の義務 国旗国歌、憲法尊重課す 自民党草案は国民に義務を課す規定をさまざまな分野で新設。3条で「国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」とした。「国旗・国歌を巡って教育現場で混乱が起きていることを踏まえた」と説明する。 婚姻などに関する24条に...
焦点 自民党改憲草案 ② 「国民の義務」と「公益と公の秩序」について
琉球新報 2016年6月14日 7面
国民の義務 国旗国歌、憲法尊重課す
自民党草案は国民に義務を課す規定をさまざまな分野で新設。3条で「国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」とした。「国旗・国歌を巡って教育現場で混乱が起きていることを踏まえた」と説明する。
婚姻などに関する24条には「家族は、互いに助け合わなければならない」との一文を加えた。新設の理由を「家族の絆が薄くなってきていると言われている」とする。
現行憲法は国務大臣や国会議員、公務員に憲法の順守義務を課しているが、草案は102条で「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」とした。
(付記:現行 第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。となっています。
これに国民が含まれていないのは、憲法は国家権力に縛りをかけるためのものであり、本質的に「国民が守る」法ではないからです。改憲案は、それを「全て国民は」と、国民を縛る内容となっています。)
国旗・国歌に関しては思想・良心の自由を侵害する、との見方がある。家族については「あるべき家族の姿」を押し付け、多様な生き方を阻害する恐れがあるとの懸念も。
そもそも権力者の暴走を防ぐためにある憲法に、こうした規定を盛り込むのは立憲主義に反するとの批判がある。
公益と公の秩序 人権や表現、制限の恐れ
「すべて国民は、個人として尊重される」と現行憲法で定める13条で、自民党草案は「個人」を「人」と改めている。
生命・自由・幸福追求権の尊重をうたう部分では、現行は人権相互の衝突を調整するため「公共の福祉に反しない限り」との制約を付けているが、草案は「公共の福祉」の意味が曖昧だとして「公益及び公の秩序」に改めた。
草案は表現の自由を定めた21条でも「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、(略)結社をすることは、認められない」としている。自民党は「オウム真理教に対して破壊活動防止法が適用できなかったことの反省などを踏まえた」と説明する。
「個人」を「人」と変えることには「個人よりも集団を尊重する発想につながる」などの批判がある。
「公益及び公の秩序」に関しても、政府の判断によって解釈が広げられ、人権や表現が不当に制限されるようにならないか、との懸念が出されている。
琉球新報 2016年6月14日 7面
国民の義務 国旗国歌、憲法尊重課す
自民党草案は国民に義務を課す規定をさまざまな分野で新設。3条で「国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」とした。「国旗・国歌を巡って教育現場で混乱が起きていることを踏まえた」と説明する。
婚姻などに関する24条には「家族は、互いに助け合わなければならない」との一文を加えた。新設の理由を「家族の絆が薄くなってきていると言われている」とする。
現行憲法は国務大臣や国会議員、公務員に憲法の順守義務を課しているが、草案は102条で「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」とした。
(付記:現行 第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。となっています。
これに国民が含まれていないのは、憲法は国家権力に縛りをかけるためのものであり、本質的に「国民が守る」法ではないからです。改憲案は、それを「全て国民は」と、国民を縛る内容となっています。)
国旗・国歌に関しては思想・良心の自由を侵害する、との見方がある。家族については「あるべき家族の姿」を押し付け、多様な生き方を阻害する恐れがあるとの懸念も。
そもそも権力者の暴走を防ぐためにある憲法に、こうした規定を盛り込むのは立憲主義に反するとの批判がある。
公益と公の秩序 人権や表現、制限の恐れ
「すべて国民は、個人として尊重される」と現行憲法で定める13条で、自民党草案は「個人」を「人」と改めている。
生命・自由・幸福追求権の尊重をうたう部分では、現行は人権相互の衝突を調整するため「公共の福祉に反しない限り」との制約を付けているが、草案は「公共の福祉」の意味が曖昧だとして「公益及び公の秩序」に改めた。
草案は表現の自由を定めた21条でも「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、(略)結社をすることは、認められない」としている。自民党は「オウム真理教に対して破壊活動防止法が適用できなかったことの反省などを踏まえた」と説明する。
「個人」を「人」と変えることには「個人よりも集団を尊重する発想につながる」などの批判がある。
「公益及び公の秩序」に関しても、政府の判断によって解釈が広げられ、人権や表現が不当に制限されるようにならないか、との懸念が出されている。
参院選 自民党改憲草案 ① 「前文」と「9条」について
- 2016/07/06
- 22:04
今回の参議院議員選挙について、本当の争点は「憲法改定」と言われています。(安倍首相は、今年3月の参院予算委員会でも、憲法改正について「私の在任中に成し遂げたいと考えている」と述べ、強い意欲を示しています。今は話題に出ませんが、集団的自衛権行使について去年9月に強行採決したように、選挙後は再び強硬に動く可能性があります。)自民党改憲案の主な項目について、下記の記事で述べられていましたので示します。(...
今回の参議院議員選挙について、本当の争点は「憲法改定」と言われています。
(安倍首相は、今年3月の参院予算委員会でも、憲法改正について「私の在任中に成し遂げたいと考えている」と述べ、強い意欲を示しています。
今は話題に出ませんが、集団的自衛権行使について去年9月に強行採決したように、選挙後は再び強硬に動く可能性があります。)
自民党改憲案の主な項目について、下記の記事で述べられていましたので示します。
(下線や括弧はこちらで記載したものです。)
焦点 自民党改憲草案 ① 「前文」と「9条」について
琉球新報 2016年6月13日 9面より
前文 国家前面、歴史を強調
今回の参院選で改憲勢力が3分の2に届けば、安倍晋三首相の目指す憲法改正が現実味を帯びてくる。だが、選挙戦で与党は憲法問題にほとんど触れず、十分な争点とはなっていない。そこで自民党が2012年に公表した第2次憲法改正草案を改めて紹介し、同党が国や社会のかたちをどう変えようとしているのかを考える。
自民党は「翻訳調で日本語として違和感がある」「わが国の歴史・伝統・文化を踏まえていない」と前文の全面的な書き換えを打ち出している。
現行憲法は「日本国民は」で始まり「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言」と続く。
一方、草案は「日本国は」と書き出し「長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴(いただ)く国家」。その上で「日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、(略)和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」と記述する。
現行の「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」(平和的生存権)との部分はなくなっている。
草案は、現行憲法が占領下で押し付けられたものとの意識が強くにじむとともに、国家が前面に出た内容。「国民主権が後退する」との懸念も出ている。
第9条 国防軍、任務拡大の恐れ
現行憲法は「第2章 戦争の放棄」として9条の条文が続くが、自民党草案は章名を「安全保障」に変更。条文では戦力不保持と交戦権否定をうたう部分をなくしている。
「国権の発動としての戦争を放棄」との文言は残るものの、「自衛権の発動を妨げるものではない」と規定。自衛権の中には集団的自衛権も含まれると説明する。さらに「国防軍を保持する」と自衛隊の名称を改めると明示。「国は(略)国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない」とも定める。
自衛隊には、装備面で空母や大陸間弾道ミサイルなどの攻撃的兵器を持てないとの制約がある。国防軍ではこうした制約がなくなり、任務が大きく広がる可能性がある。
安全保障関連法で限定的に容認された集団的自衛権は、制限が緩和されることも考えられる。「国民と協力」との部分は、国民に領土・資源確保義務を課すとも解され、「将来的に国防義務を課すことを視野に入れている」と懸念する声もある。
(安倍首相は、今年3月の参院予算委員会でも、憲法改正について「私の在任中に成し遂げたいと考えている」と述べ、強い意欲を示しています。
今は話題に出ませんが、集団的自衛権行使について去年9月に強行採決したように、選挙後は再び強硬に動く可能性があります。)
自民党改憲案の主な項目について、下記の記事で述べられていましたので示します。
(下線や括弧はこちらで記載したものです。)
焦点 自民党改憲草案 ① 「前文」と「9条」について
琉球新報 2016年6月13日 9面より
前文 国家前面、歴史を強調
今回の参院選で改憲勢力が3分の2に届けば、安倍晋三首相の目指す憲法改正が現実味を帯びてくる。だが、選挙戦で与党は憲法問題にほとんど触れず、十分な争点とはなっていない。そこで自民党が2012年に公表した第2次憲法改正草案を改めて紹介し、同党が国や社会のかたちをどう変えようとしているのかを考える。
自民党は「翻訳調で日本語として違和感がある」「わが国の歴史・伝統・文化を踏まえていない」と前文の全面的な書き換えを打ち出している。
現行憲法は「日本国民は」で始まり「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言」と続く。
一方、草案は「日本国は」と書き出し「長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴(いただ)く国家」。その上で「日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、(略)和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」と記述する。
現行の「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」(平和的生存権)との部分はなくなっている。
草案は、現行憲法が占領下で押し付けられたものとの意識が強くにじむとともに、国家が前面に出た内容。「国民主権が後退する」との懸念も出ている。
第9条 国防軍、任務拡大の恐れ
現行憲法は「第2章 戦争の放棄」として9条の条文が続くが、自民党草案は章名を「安全保障」に変更。条文では戦力不保持と交戦権否定をうたう部分をなくしている。
「国権の発動としての戦争を放棄」との文言は残るものの、「自衛権の発動を妨げるものではない」と規定。自衛権の中には集団的自衛権も含まれると説明する。さらに「国防軍を保持する」と自衛隊の名称を改めると明示。「国は(略)国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない」とも定める。
自衛隊には、装備面で空母や大陸間弾道ミサイルなどの攻撃的兵器を持てないとの制約がある。国防軍ではこうした制約がなくなり、任務が大きく広がる可能性がある。
安全保障関連法で限定的に容認された集団的自衛権は、制限が緩和されることも考えられる。「国民と協力」との部分は、国民に領土・資源確保義務を課すとも解され、「将来的に国防義務を課すことを視野に入れている」と懸念する声もある。